若者,女性,抑うつ症状の軽さが不眠と孤独感の関連性を強める

 

目的:孤独感は睡眠問題と関連することが複数の研究で指摘されているが,他の精神症状を統制した場合も同様の結果が得られるかどうかを検討したプロスペクティブ研究は少ない。本研究では,6つのサンプル(Study 1:大学生666名,Study 2:新兵2785名,Study 3:自殺行動やうつの既往を持つ成人208名,Study 4:精神科外来患者343名,Study 5:自殺リスクの高い若者326名,Study 6:大学生183名)を用いて,不眠と孤独感の関連を検討した。

結果:

Study 1悪夢と不安を統制した後も不眠は孤独感と有意な関連(β = 0.14)。しかし,抑うつを統制したら有意な関連なし。

Study 2負担感(burdensomeness)を統制した後も不眠は帰属意識の阻害(≒ 孤独感)と有意な関連(β = 0.21

Study 3不安を統制した後も不眠は帰属意識の阻害(≒ 孤独感と有意な関連(β = 0.20)。しかし,抑うつ統制した場合は有意な関連なし。

Study 4不安を統制した後も不眠は帰属意識の阻害(≒ 孤独感と有意な関連(β = 0.27)。しかし,抑うつ統制した場合は有意な関連なし。

Study 5睡眠問題は1ヶ月後(β = 0.17),6ヶ月後(β = 0.18)の孤独感の増加と関連。ただし,ベースライン時の孤独感を統制すると関連なし。

Study 6ベースラインの孤独感と不安を統制した後も不眠は5週間後の孤独感と有意に関連(β = 0.12)。しかし,抑うつ統制した場合は有意な関連なし。

メタ解析(6つのサンプルの統合):不眠と孤独感についての相互関係についてのメタ解析を行った結果,中程度の効果サイズ(r = 0.32, 95% CI: 0.22–0.42)が認められた(Fig. 1)。また,年齢が若い,女性の割合が多い、白人対象者が多い、抑うつ症状の程度が低いほど、効果サイズが高いことが分かった。

結論:睡眠と孤独の関係は,抑うつ症状が何らかの影響を持っている。 

 

(感想)

不眠と孤独感の関連は中程度あるが,年齢が若いほど孤独感が強いというのは重要な気がする。孤独対策はどうしても高齢者をイメージしがちだが,これは社会的孤立の方か? コロナ禍で女性の自殺率が高いという報道もあるが,今回の研究はそれを裏づけている。また,抑うつ症状の程度が軽いほど,睡眠と孤独の関係はシンプルだが,うつ症状が強くなってくるとそれ以外の要因が強くなるのか。不眠は孤独感のリスク因子で,維持因子は抑うつということかな。

 

出典:Hom MA, et al (2017). Investigating insomnia as a cross-sectional and longitudinal predictor of loneliness: Findings from six samples. Psychiatry Research, 253, 116-128.