併存不眠症にはCBT-Iのセルフヘルプ本に電話サポートが有効

背景

認知行動療法は不眠症の治療に有効であるが,利用は限られている。セルフヘルプで行うことで,利用可能性は広がるかもしれないが,特に,併存する問題を抱える不眠症患者にとっては,制限がある。

仮説:認知行動療法に基づくセルフヘルプ本は,不眠症患者,及び併存疾患のある不眠症患者の治療に有効である。さらに,短期療法士の電話サポートを追加することで,効果が高まる。

 

方法

133名の成人の不眠症患者(アメリカ睡眠医学会による不眠症研究診断基準を満たし,ISI10ポイント以上)。不眠症歴平均11.8年,92.5%が併存疾患あり(アレルギー,痛み,うつ病など)。なお,睡眠時無呼吸症候群など他の治療を必要とする睡眠障害や重度の体性または精神障害は除く。 介入の前後及び,3ヶ月後にフォローアップ評価を行なった。指標は,睡眠日誌とISI,DBAS,SRBQ(睡眠関連行動),PSS-10(知覚ストレス),CORE-OM(一般的な心理的苦痛)

 介入は,睡眠制限,刺激統制,認知再構成を含む確立された認知行動療法による6週間の読書療法。セラピストサポートは,毎週ごとの15分間の構造化された電話サポートを行った。

1.    読書療法(セラピスト有44名,セラピスと無45名)

2.    ウェイトリスト(44名)

 

結果

・ウェイトリスト群と比較して,セルフヘルプグループでは有意な改善が認められた。また,3ヶ月のフォローアップでも効果の維持が確認された。

・セラピストのサポートの有無では,サポート有群の方が,そう睡眠時間を除く全ての睡眠日誌の項目で改善が見られ,また中途覚醒と睡眠効率に特に大きな効果が認められ,寛解率(ISIスコア)も高かった。また,サポート有群の方が,より読書を行ったと報告した。

・3ヶ月後のフォローアップでは,サポートの有無の違いが,睡眠効率にのみ影響があった。

・日中の機能について,セラピストサポート有群は,ウェイトリスト群よりも日中の機能と心理的苦痛の全てにおいて改善効果が認められた。

・併存疾患の数が多いほど,不眠症の重症度の改善はわずかに低くなった。

 

考察

・不眠症患者及び,併存疾患を持つ不眠症患者対するセルフヘルプによる認知行動療法は,不眠症の重症度を著しく軽減し,睡眠と日中の機能を改善することが示された。

・ 特に,セラピストが支援する場合,併存する問題を抱える不眠症患者にとっても,低コストでの個別療法と同じくらい効果がある可能性が考えられる。

 併存疾患の数が多いほど,不眠症の重症度の改善がわずかに低下しており,今後,不眠症と併存疾患の特定の組み合わせに対するCBTの効果を評価する研究が必要である。(例:悪夢のある人)

 

感想】治療コストの削減はこれまでも語られてきたテーマである。1週間に15分でも治療効果をブーストできるのであれば,そういったセルフヘルプを基本として+αで専門家の介入がある治療サービスが確立できれば,かなりのコスト削減,導入までの敷居を下げることにつながるのではないか。(担当:町田奈穂)

 

出典:Jernelov S,  et al: Efficacy of behavioral self-help treatment with or without therapist guidance for co-morbid and primary insomnia -a randomized controlled trial. BMC PSychiatry 12:5, 2012.