不眠の治療は行動療法が First Choice

不眠の認知行動療法(CBT-I)と睡眠薬のエビデンスは高く,CBT-Iは不眠症への第一選択肢として推奨されている。しかし,第一選択としてのエビデンス及び奏功しなかった場合の第二選択肢のエビデンスは少ない。そこで,4つの治療シークエンスの効果を比較し,不眠の改善における併存疾患の影響について検討した。

【4つのシークエンス】①行動療法→認知療法,②行動療法→ゾルピデム,③ゾルピデム→行動療法,④ゾルピデム→トラゾドン

211名(女性132名,平均45.6±14.9歳)のうち,74名が不眠症/うつ病を併発

【治療】

第一段階(6週間):行動療法 or ゾルピデム  →非寛解者は第二段階へ

第二段階(6週間):①(行動療法から)認知療法,②(行動療法から)ゾルピデム,③(ゾルピデムから)行動療法,④(ゾルピデムから)トラゾドン

【結果】

第一段階:行動療法(寛解率38%,反応率46%),ゾルピデム(寛解率30%,反応率50%)

第二段階:

①(行動療法から)認知療法(寛解率45%,反応率68%*)

②(行動療法から)ゾルピデム(寛解率56%*,反応率63%*)

③(ゾルピデムから)行動療法(寛解率36%,反応率48%)

④(ゾルピデムから)トラゾドン(寛解率49%*,反応率56%)*は統計的に有意

寛解率,治療反応率は,12ヶ月フォローアップでも維持されていた。

【併存不眠症 vs. 原発性不眠症】

第一段階:反応率 54% vs. 46%(行動療法:52% vs. 34%;ゾルピデム:56% vs. 39%)

第二段階:反応率 74% vs. 54%*

①(行動療法から)認知療法(85%)vs. ②(行動療法から)ゾルピデム(58%)

③(ゾルピデムから)行動療法(40%)vs. ④(ゾルピデムから)トラゾドン(78)

【結論】第一選択肢として,行動療法とゾルピデムは同等の効果を持つ。治療が上手くいかなかった場合は代替治療を提供することが大切。

 出典:Morin CM et al. Effectiveness of sequential psychological and medication therapies for insomnia disorder: A randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry (online first)

 

→(研究的な印象)CBT-IをFirst choiceとすべきという欧米ガイドラインのエビデンスを直接比較したような研究。結果で見るとFIrst choiceはどちらでもよさそうだが,奏功しなかった場合のSecond choiceの効果を見ると,Wait-listやPlaceboなどの統制群があった方が良かったかなと思う。ドロップアウトも少々多い。

(臨床的な印象)実臨床では行動療法は4セッション程度で,終わった後はしばらくフォローして安定性を見ている気がする。認知療法と分けず関係フレーム理論に基づいて言語機能を変える方が早いと思う。