睡眠不足が続くと不快に感じる表情が増える?

不十分な睡眠時間は,行動変化や神経機能の変化によって情動処理にネガティブな影響を及ぼす。しかし,よく用いられる全断眠実験ではなく,継続的な睡眠制限による影響についてはさほど注目されていない。そこで本研究では,健常成人を対象に,5時間/晩の睡眠制限を5日間行った場合の情動反応ついて検討した。

対象者42名は,いずれかの実験条件(時間制限条件,通常睡眠条件)に1週間ずつ交互に参加した(クロスオーバー)。実験中,参加者は国際感情写真システム(International Affection Picture System: IAPS)から選んだ90枚の画像について評価した。

その結果,通常睡眠条件に比べて,時間制限条件では,快表情とニュートラル表情をよりネガティブに評価した。これは気分の変化を統制しても同様であった。一方で不開票場については条件間に有意差は見られなかった。

以上のことから,連続的な睡眠不足は快表情とニュートラル表情にネガティブな情動バイアスを引き起こすことが分かった。

(感想)日常生活で起こりうる睡眠状態での感情読み取りの変化を明らかにした研究。睡眠不足だろうとなかろうと,不快なものは不快。ただ,それ以外のものも不快と評価してしまうところに睡眠負債の悪影響が見て取れる。社交不安症の注意バイアス・解釈バイアスの研究だと,ニュートラル表情にもネガティブ評価をしてしまうことが分かっているので,睡眠負債による影響もあるのだろうか? もしくは違うメカニズムなのだろうか?

出典:Tempesta D et al: The impact of fice nights of sleep restriction on emotional reactivity. J Sleep Res 2020;00:e13022 (online first).