不眠が長引くと,ガンのことより睡眠に苦しめられてしまう

Taylor LM et al.(2003). Attentional bias in people with acute versus persistent insomnia secondary to cancer. Behavioral Sleep Medicine,1,200-212.

慢性不眠患者の注意バイアスについて明らかにするために,入眠困難をもつガン患者25名を対象に情動ストループ課題を実施した。参加者は急性不眠(0-3ヶ月)14名と慢性不眠(12-18ヶ月)11名に振り分けられ,ガン関連語,睡眠関連語,中性語に対する反応が測定された。その結果,慢性不眠患者は睡眠関連語に対する反応がより遅かった。また,中性語とガン関連語,中性語と睡眠関連語の反応時間の差について比較した結果,ガン関連語については,両群ともに反応時間が多くかかっていたが(有意差はなし),睡眠関連語に関しては,慢性不眠群の方が急性不眠群よりも,中性語より反応時間が多くかかっていた。このことから,睡眠に対する心理的なとらわれは,ストレスと関連した急性不眠の後の睡眠改善を妨害する。

 → ガン患者さんで不眠が発症した場合,急性不眠では,特に睡眠に関してこだわりは見られず,ガンに関することに注意が向いている。しかし,不眠が慢性化するとガンに関することに加えて,不眠に関することにも注意が向いてきてしまう。