カフェインは睡眠位相を後退させる

Burke TM, Markwald RR, McHill AW, Chinoy ED, Snider JA, Bessman SC, Jung CM, O’Neill JS, Wright Jr KP: Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and invitro. Sci Transl Med 7:305ra146, 2015.

 カフェインの覚醒促進効果と睡眠妨害効果はすでに明らかにされているが,概日リズムへの影響については明らかにされていない。そこで,夜間のカフェイン摂取が体内のメラトニンリズムの遅延に及ぼす影響,およびカフェインの慢性摂取が分子振動(molecular oscillation)の延長に及ぼす影響について,アデノシン受容体/環状アデノシン一リン酸(cAMP)依存メカニズムの観点から検討した。本研究は,プラセボコントロールを用いた二重盲検法で実施した。健常成人5名(女性3名,平均年齢:24.0±2.8歳)を対象に20回の位相シフトプロトコルを実施した。対象者には,ダブルエスプレッソに相当するカフェイン薬を通常の就寝時刻3時間前に摂取してもらい,メラトニンリズムの遅延が起こるかどうかを検討した。また,光条件(高照度ライト,Dimライト)を加え,就寝時刻3時間前にいずれかの光条件に設定した。さらに人間の骨肉腫U2OS細胞(時計遺伝子発光酵素受容体)を用いて,カフェインに依存性の概日リズムの延長を検証した。dim-light caffeine群は,dim-light placebo群に比べて,40分程度の位相後退が求められた(Cohen’s d = 0.93)。bright-light placebobright-light caffeine群は,両群ともにdim-light placeboよりも位相が後退していた(それぞれ,85分(d=2.25),105分(d=3.66))。bright-light caffeine群は,dim-light caffeine群に比べて位相が後退していた(d2.13)。カフェインはcAMPレベルを増加させ,細胞のサーカディアン時計のコア要素に影響を及ぼしていた。以上のことから,カフェインは人の概日リズムに影響を与えることが分かった。

(感想)カフェインによる位相後退効果を明らかにした研究。通常,位相シフトは同調因子(特に光)が影響するが,カフェインにもあるんだという発見。ただ,bright-light placeboblight-light caffeineの間には有意差がないので,光よりは位相シフトへの影響は弱いのではないか。対象者5人というのがちょっと引っかかるけど,おもしろい。